乳首の保湿始めました

 「最近どうですか?」と聞かれて応えられる当たり障りのない話題が、「乳首の保湿始めました」くらいしかない。

 

 もう、当たり障るような話題しか私の周りになくて、当たり障り無い話題なんてほとんどない。例えば、ちょっといいかなって思ってた名大卒(27)に「発展性がないから会うの控えません?」ってフラれた話とか、最近になって女の子が”そういう意味”で好きで男の人は積極的に好きになれないことに気づいたとか、処女を拗らせに拗らせた結果ホステス(笑)みたいな仕事始めたこととか。

 どれもあまりに身を斬る話題ばかりで、もっとフランクに、どちらも傷つかずに話せるような易しい話題が無い。

 

 

 

 今日、入学式依頼初めてスーツを着て、メルカリで買ったサイズの合わないパンプスを履いて、就職活動をしてきた。

 13時にインターン合同説明会開始、としか駅に貼られていたポスターにはかいてなかったけれど、実際は、主宰する団体のホームページで会員登録をして、出席の申し込みをし、更に12時から行われるマナー講座へ応募して、会員登録をした生徒が優先的に企業ブースを回ることができる、という仕組みだった。

 予約し忘れた(というか、私が合説の予約をした時点で定員オーバーで、マナー講座予約用URLが私に届かなかったらしい)マナー講座が終わった12:50、マナー講座を予約した生徒が前から順番に企業ブースへ通されていく。

 白いパネルで囲われパイプ椅子が並べられただけの簡素な”会場”から出ると、百人近い学生が黄色いテープの向こう側で一列に並んでいた。地元の、養豚場を思わせる光景だった。

 3社以上回らないと来た意味が無いと言われたので、3社は回った。昨晩から食事を摂っていなかった胃袋は悲鳴を上げ、私は合わない新しい靴を履いていたせいで呻き声をあげたが、それでも気合で3社回った。一番前に座り、一生懸命聞いた。自分の仕事について真剣に話す大人を見て、なんだか泣きそうになった。

 

 

 ダイエットを始めたので、呑まないと決めていたのに、行きつけのお店がイベントを催していたため、ついうっかりスーツで呑みにでてしまった。オジサマとお兄さんに奢られ、調子に乗って元・ホームタウンまで繰り出し、がぶがぶ呑んで、ノリで電車に乗って、大学の先輩とマックに行った。

 真面目と不真面目がぐちゃぐちゃで、自分自身のあまりの無茶苦茶さに酔いそうになる。でも、この引き裂かれ感が私なのだとも思う。

 知らない男の人にソウルのノり方を教えられたり、おっさんにお酒奢ってもらったり、おじさんに最近の若者はと怒られたり、既婚のイケメンにキスを送られたり。

 若いうちが花なんだから。

 だから言わせてほしい。私は貴方達に等しく興味が無く、だからこそ心から有難うと思っている。

 

 

 身を斬るような痛切な話題から目をそらしたくて、私はお酒を呑んでしまう。

 私は私のふりをして、私自身の死にたくなるような痛切な話題からなるべく遠くへ走って逃げる。

 若いうちが花。

 男どもよ、私が花であるうちに、私を私自身からなるべく遠くへ運んでくれたまえ。